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「S4 HANAでクラウド化」No7.SAP HANAへすべてのデータを移行すべき?クラウド化にあたってのデータ見直し

1.はじめに

既存のSAPからS/4 HANAへと移行するにあたって重要となるのはデータ移行です。単純にシステムを新しくすれば良いというわけではなく、新しいシステムで既存のデータを利用できるようにしなければなりません。

データを移行するにあたっては、対象のデータを選定しなければなりません。全てのデータを移行することは必ずしも良いとは限らないため、データの移行範囲について今回は考えていきましょう。

2.S/4 HANAへデータをすべて移行すべきか

S/4 HANAへデータを移行する際は「すべて移行」と「選択して移行」が考えられます。それぞれ異なった効果を持っているため、どのような効果を感じられるのかご説明します。

・データをすべて移行する効果

すべてのデータを移行すれば、新しいSAP環境で「必要なデータが移行されていない」との状況が発生しません。データありきで移行を計画するため、移行してから「データ不足によって業務が継続できない」との状況に陥らないのです。

ただ、業務面では大きな効果がありますが、データをすべて移行する作業は担当者に大きな負荷がかかってしまいます。また、データをすべて移行しなければ業務が継続できない状況は理想的な状態ではありません。そのため、移行の効果は大きいですが特段の理由がない限りは移行データを選択すべきです。

・データを選択して移行する効果

一部のデータだけを選択して移行すれば、移行作業の工数を最小限に抑えられます。移行対象のデータが増えると作業量も増えるため、データを選択して総量を減らせばスムーズなデータ移行が可能です。

ただ、データを選択して移行すると移行してから「データが不足している」という状況が起きるリスクがあります。選択することで移行作業の工数は抑えられますが、移行データの選択ミスが起きないよう、事前の検討には時間を割く必要があります。

また、必要ならば後ほど追加のデータ移行を実施することも可能です。クラウドならばデータベースの拡張作業は容易であるため、データ量が極端に多くなってもストレージ面での影響は意識せずに済みます。

3.S/4 HANAへ移行するデータの範囲をどうすべきか

S/4 HANAへのデータ移行はご説明したとおり移行範囲を決定しなければなりません。主に「すべて移行する」か「選択して移行する」かを決定します。

・システムの移行方針に基本は従う

基本的にはシステムの移行方針に従うようにしましょう。多くの企業では「システムをどのように移行するか」について定められているはずです。そのため、そのような方針があればそれを基本とします。

ただ、SAPのような基幹システムは、一般的なシステムの移行方針ではカバーできない可能性もあります。他のシステムと比較すると規模の大きなシステムであるケースが多いからです。方針があればそれに従うことが重要ですが、規模の大きさやクラウドへ移行することなどを踏まえて、適切な方針を定めていきましょう。

・カスタマイズデータは移行が難しい場合も

既存のSAPにカスタマイズが含まれている場合は、カスタマイズに関わるデータ移行は難しいかもしれません。カスタマイズすれば何かしらの機能を作り込んでいるケースが多く、これはS/4 HANAに実装されていない可能性があるからです。S/4 HANAにも同様のカスタマイズが実装されていなければ、そのままのデータ移行は難しくなってしまいます。

S/4 HANAのようにSAPを根本的に新しい製品へ切り替える際は、カスタマイズが見直される傾向にあります。既存のカスタマイズをS/4 HANAにそのまま実装していては、システム移行の意味が薄れてしまうからです。カスタマイズではなくS/4 HANAに用意されているデフォルトの機能に落とし込むならばいいデータ移行できる可能性はありますが、データ移行ができない場合も多々あります。

4.S/4 HANAへのデータ移行を検討する5つのポイント

データ移行を検討する際はいくつもの観点から評価する必要がありますが、今回は最低限意識してもらいたいポイントを5つご紹介します。

  • マスタデータは移行時に刷新する
  • 古いデータは有用性を再評価する
  • データよりも新機能にフォーカスする
  • 段階的なデータ入れ替えを検討する
  • データ移行コストと価値を天秤にかける

・マスタデータは移行時に刷新する

S/4 HANAにはマスタデータと呼ばれるものが含まれています。マスタデータとは一般的に一度登録するとほとんど変更が発生しないデータを指します。例えばS/4 HANAには以下のようなマスタデータが存在します。

  1. 従業員情報
  2. 取引先情報
  3. 製品情報
  4. 勘定科目

これらのマスターデータは移行するのではなく、本番稼動時に最新のものを導入すべきです。システムを移行するにも関わらず、マスターデータが古いものでは使い勝手が悪くなってしまいます。そのため、これらのデータは移行対象ではなく、本番稼働に合わせて最新のものを用意して、それが取り込めるように段取りしなければなりません。

・古いデータは有用性を再評価する

データ移行の範囲を検討すると「可能な限りすべてのデータを移行したい」と主張する人が多くの環境で見受けられます。「昔のデータも含めて残しておくに越したことはない」と考えているのでしょう。ただ、このような主張は真に受けず、データの有用性を評価しなければなりません。

例えば昔に登録したデータは、何年も利用していない可能性があります。取引先データの中にはすでに廃業した企業が含まれているかもしれません。そのようなデータを移行する必要はないのです。

また、帳票としてデータを集約していれば、詳細なデータは不要になるかもしれません。同じ意味を持つデータを複数管理すると手間がかかるため、移行のタイミングで重要性を見極めるべきです。

ただ、データの中には有用性がなくとも保存義務があるものが含まれます。会計系のデータなど法律で保存が求められているものは、社内で利用することがなくとも、万が一に備えて移行しなければなりません。

・データよりも新機能にフォーカスする

S/4 HANAのように新しいシステムへ移行する際は「新しいシステムの機能をどう利用するか」にフォーカスすべきです。既存のデータにこだわって新機能を利用しないならば、システム移行の意味が薄れてしまいます。

既存のデータにフォーカスしすぎると「データをどのようにマッピングするか」に終始してしまいます。SAPの新しい機能を利用した「新しい業務フロー」を考えられなくなるのです。データにとらわれるとデータありきの考え方しかできません。

S/4 HANAへの移行を考えるならば、これをきっかけとして業務フローを見直すべきです。特にクラウドにS/4 HANAを構築するならば、様々なサービスを活用してより良い業務フローを生み出せるでしょう。データにとらわれずS/4 HANAとクラウドのサービスにフォーカスして、どのデータが必要か見極めることをおすすめします。

・段階的なデータ入れ替えを検討する

SAPのような基幹システムのデータ移行に不安を感じるならば、段階的なデータ移行も検討しましょう。必要なデータと業務を段階的に移行すれば、データ移行の範囲も段階的に検討できます。

基幹システムを一気に刷新して何かしらトラブルが生じると、業務に多大なる影響を与えかねません。SAPを利用するような企業は規模が大きいと考えられるため、取引先などを含めたトラブルが起きる可能性があります。システムトラブルによる業務停止は可能な限り避けるべきものです。

そのようなトラブルを避けるには、データの段階的移行がおすすめです。ある程度の制約内で移行データを検討する必要はありますが、トラブル発生時の影響を最小限に抑えられます。

・データ移行コストと価値を天秤にかける

データ移行にはある程度のコストが必要です。移行対象のデータを選定するだけでもコストが生じますし、そこからデータをクレンジングしてS/4 HANAへと移行できるようにするためにもコストが生じます。社内で対応することだけではなくベンダーに依頼するコストが生じることもあるでしょう。

移行対象のデータを選定する際は、このようなコストとデータの価値を天秤にかけなければなりません。すべてのデータを移行するに越したことはありませんが、データの移行にはコストがかかってしまいます。高額なコストをかけてまで必要とするデータでないならば、移行のタイミングで切り捨てる選択を持っても良いでしょう。

例えば、「S/4 HANAへの移行タイミングから遡って5年間利用していないデータは切り捨てる」と決めてしまう方法が考えられます。これは思い切った決断にはなりますが、移行にかかるコストを踏まえるとある程度の思い切りは必要です。ただ、会計系のデータなど長期に渡って管理が義務付けられているものもあるため、そのようなデータはコストがかかっても移行するしかありません。

5.まとめ

S/4 HANAへデータを移行するにあたって、移行範囲をどのように検討すべきかを説明しました。「すべてを移行すれば良い」と考える人は多いですが、負担が大きいため基本的にはおすすめできません。必要なデータをピックアップして移行するようにしましょう。

移動範囲を決定する際は「S/4 HANAに移行しても利用するデータなのか」「新しい業務フローに必要なデータなのか」を認識することが重要です。とにかくデータを移行しようとするのではなく、新しくクラウドにS/4 HANAを導入するならば、新機能の活用やクラウドサービスの利用に適したデータだけを移行すれば良いのです。

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