「SAP MMモジュールのナレッジ共有」No.5 SAPMMのトランザクション(購買依頼、購買発注)
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1.はじめに
SAP Freelance Jobs運営事務局です。
この度は「MMモジュールのナレッジ共有」と題し、数回に渡って、SAP ERPの「MM」の概要について解説していこうと思います。
今回は、MMモジュールのプロセスで作成されるトランザクションデータ「購買依頼」、「購買発注」についてお話します。
2.SAP MM購買依頼伝票
2-1.購買依頼伝票とは
「購買依頼伝票」とは、「品目」や「サービス」を必要とする部署「要求元部署」から、購買部署に購入の意思表示を出すときにSAPに登録される伝票です。例えば、総務部で使っているプリンタのプリント用紙が切れたので調達部に「プリント用紙を購入してほしい」といったような、企業内のやり取りが発生した際にSAPに登録する伝票になります。
購買依頼伝票は、上記のような事柄が発生した際に1件ずつ手作業でSAPに登録することもできますが、SAPから自動で作成することも可能です。例えば資材所領計画(MRP)において必要になった量の購買依頼伝票を作成したり、製造指図の生成により品目が必要になった場合に自動で作成されたりします。
2-2.購買依頼伝票の構成
購買依頼伝票は、ヘッダと明細といった構成になっております。ただ、購買依頼伝票のヘッダ情報はあまり重要な項目は無く、明細が重要になってきます。明細情報は複数指定できるため、1つの購買依頼伝票で複数の品目を指定することが可能です。
2-1.でも触れました通り、企業内のやり取りで発生する伝票のため、価格や仕入先の設定については必須ではありません。重要な明細情報は以下のような項目になります。
・品目
要求元部署が必要としている品目を指定します。
・数量
要求元部署が必要となる品目の数量を指定します。
・納期
要求元部署に納入してほしい日付を指定します。
・勘定設定カテゴリ
原価センタや指図、WBS(プロジェクト)などの勘定科目に費用を計上したい場合に設定します。
2-3.購買依頼伝票に関連するテーブルとトランザクションコード
購買依頼伝票を操作するためのトランザクションコードと、データが保持されるテーブルは以下の通りです。
■テーブル
テーブルID | テーブル名 |
EBAN | 購買依頼伝票明細 |
■トランザクションコード
機能名 | トランザクションコード |
購買依頼伝票登録 | ME51N |
購買依頼伝票変更 | ME52N |
購買依頼伝票照会 | ME53N |
購買依頼伝票承認 | ME54N |
3.SAP MM購買発注伝票
3-1. 購買発注伝票とは
「購買発注伝票」とは、購買部署が要求元部署から受けた購買依頼に対して、適正な仕入先や取引価格を決定し、最終的に仕入先に注文を出すときに登録する伝票になります。例えば、先ほどの購買依頼のプロセスの続きで、プリント用紙の単価が、1枚5円の仕入先A社と1枚6円の仕入先B社で、「単価が安いA社から購入する」といったように取引条件が決定した際にSAPに登録する伝票になります。
購買発注伝票も、購買依頼伝票と同じく1件ずつ手作業で登録することができますが、頻繁に発注する必要がある品目は、購買情報マスタや供給元一覧などのマスタを設定することで自動的に購買発注を出すことが可能になります。
3-2. 購買発注伝票の構成
購買発注伝票も、購買依頼伝票と同様、ヘッダと明細といった構成になっております。購買発注伝票は購買依頼伝票を流用して登録することが可能で、品目、数量、納期は同様の値が購買発注伝票にそのまま設定されます。
購買発注伝票はヘッダ情報に仕入先があり1伝票1仕入先のみ設定できるような構成になっております。以下が購買発注伝票の重要な項目になります。
■ヘッダ情報
・仕入先
発注先の仕入先を設定します。
■明細情報
・品目
仕入先に発注する品目を指定します。
・数量
仕入先に発注する品目の数量を指定します。
・納期
納入してほしい日付を指定します。
・単価
品目の単価を指定します。
3-3. 購買発注伝票に関連するテーブルとトランザクションコード
購買依頼伝票を操作するためのトランザクションコードと、データが保持されるテーブルは以下の通りです。
■テーブル
テーブルID | テーブル名 |
EKKO | 購買伝票ヘッダ |
EKPO | 購買伝票明細 |
■トランザクションコード
機能名 | トランザクションコード |
購買発注伝票登録 | ME21N |
購買発注伝票変更 | ME22N |
購買発注伝票照会 | ME23N |
購買発注伝票承認 | ME28 |
品目別購買発注一覧表示 | ME2M |
仕入先別購買発注一覧表示 | ME2L |
4.SAP MM購買依頼伝票と購買発注伝票のまとめ
本記事では、SAP MMの「購買依頼伝票」「購買発注伝票」について解説しました。
SAP MMの組織やマスタの設定が完了し、最初に実行するプロセスが購買依頼の登録、次に購買発注という順番でプロセスが流れていきます。どの分野の企業でも購買活動が継続されている限りは、これらのプロセスが発生しております。また、SAPのプロセスは世間一般的な業務プロセスですので、自身がSAPプロジェクトのマネージャーになったときに調達マネジメントをする際にも役立つと思います。色々な場面で役立つ知識になりますので、しっかりと身につけておくことをおススメします。