トップ > 技術コラムNews > SAP技術情報 > 「S4 HANAでクラウド化」No.10 SAP HANAへ移行するならば手順が重要!基本的な流れを解説

更新日 

「S4 HANAでクラウド化」No.10 SAP HANAへ移行するならば手順が重要!基本的な流れを解説

1.はじめに

S/4 HANAへの移行を進めるにあたっては手順を作成しなければなりません。SAPのような大規模システムを利用する際は、細かく検討した手順書が必須です。行き当たりばったりで移行を進めてしまうと、大きなトラブルに繋がりかねません。

 

とはいえ、システムの移行作業がどのようなものであるかイメージできていない人は多いはずです。今回はS/4 HANAのような大規模なシステムを移行するにあたって、どのような移行手順が必要となるのかをご説明します。

2.S/4 HANAの移行に向けた作業の全体像

状況によって段取りは少々異なりますが、システム移行の全体像は以下のとおりです。

 

・移行計画の立案

・移行に必要な資材の手配

・移行リハーサル

・本番移行

 

大きく分けて4つのフェーズがあります。それぞれのフェーズで、主に対応しなければならない人や対応内容が大きく異なります。続いてはそれぞれのフェーズについてご説明します。

3.移行計画の立案

最初に移行計画を立案し、どのような段取りでS/4 HANAへの移行を進めるのか決定しなければなりません。

3-1.基本設計完了後から着手

S/4 HANAの導入を進める過程でも、基本設計が完了した辺りから移行計画の立案に着手しましょう。移行計画の作成は意外にも時間を要してしまう作業です。計画的に進めておかなければ、計画を焦って作成することになりかねません。

 

ただ、基本設計が完了する前に着手しても、情報が少なすぎて移行計画の立案ができません。ある程度基本的な部分が確定してから立案へと進みましょう。

3-2.移行のマスタスケジュールを作成してからブレークダウン

移行計画を作成するにあたっては、マスタスケジュールの作成が必要です。ベースとなるこちらのスケジュールを作成して、このスケジュールを利用して細かなスケジュールを作成していくのです。

 

マスタスケジュールを作成するにあたっては、ステークホルダーや業務要件などを考慮しなければなりません。例えば、S/4 HANAの利用開始予定日が決まっているならば、その日をデッドラインとしたスケジュールの作成が必要です。

4.移行計画に利用する資材の手配

スケジュールの作成が完了すれば、移行に向けて必要な資材の手配が求められます。移行にあたっては様々なものが必要となるため、計画的に準備していきましょう。

4-1.移行ツールの開発

移行にあたってツールを利用するならば、ツールの開発が必要です。内容によってはツール開発に長期間必要となるため、用件を洗い出して計画的に着手する必要があります。

 

例えば、S/4 HANAへデータを移行するためにデータ加工が必要ならば、そのツールを開発します。データ移行については以前にご説明していますが、そこでご説明したとおり移行データの選定や加工が必要です。その部分について事前にプログラムを作成しておきます。

4-2.利用者向けマニュアルの作成と教育計画

S/4 HANAのように新しいシステムを導入する際は、利用者向けマニュアルが必要です。エンドユーザーにはシステムに慣れていない人も多いと考えられるため、できるだけ易しいマニュアルを作成しましょう。SAPのマニュアルはありますが、独自に開発した部分については自分たちで作成するしかありません。

 

また、マニュアルを作成するだけではなく、どのように教育するかも考えなければなりません。エンドユーザの数が多いと教育には時間がかかるため、計画を立てて効率よく教育することが求められます。

 

ただ、教育についてはエンドユーザーすべてに直接教育する必要はないでしょう。各部門でITに詳しい人材などを集め、その人たちに教育してから、部門内で展開してもらうのが無難です。

4-3.移行作業に利用する手順書の作成

移行作業では手順書が必要となるため、移行の前に作成しておくことが重要です。移行の直前になってから作成すると負荷が高まってしまうため、計画的に作成して準備しておきます。

 

ただ、以下でご説明しますがリハーサルには2種類あり、それぞれ手順書を作成できるタイミングが異なります。簡易リハーサルの手順書は開発フェーズで作成できますが、全体リハーサルの手順書は開発が完了してからです。同時に作成できるものではないため、そこは認識してください。

5.移行リハーサル

移行にあたっては事前のリハーサルが重要です。リハーサルは軽視されがちですが、リハーサルの手を抜くと移行に失敗すると言っても差し支えないぐらい重要です。コストはかかりますが、必ずリハーサルも頭に入れておきましょう。

5-1.簡易リハーサル

簡易リハーサルは、S/4 HANAへの移行のうち一部分についてリハーサルを実施するものです。システム開発やテストの過程で部分的なリハーサルをして、問題なくプログラム開発ができていることを確認します。

 

基本的な動作などを確認するリハーサルであるため、複雑な作業は必要ありません。事前に確認しておく必要があるデータパターンやモジュールなどを洗い出しておいて、それらについてのみリハーサルします。リハーサルでも何かしら問題があった際は、プログラムの設計を見直したり実装方法を変更したりするのです。

 

プログラムの設計や実装に影響する部分であることから、テスト計画の段階にリハーサルが含まれる場合もあります。プロジェクトの進め方によって扱いが異なるため、そこは臨機応変に対応しましょう。

5-2.全体リハーサル

全体リハーサルは、S/4 HANAの移行を実際にやってみる作業です。本番と同様にシステム移行を実施して、作業内容や結果に問題がないか評価します。問題がない状態が望ましいものの、何かしらトラブルが起こることが多いため、その内容を踏まえて手順などを修正しましょう。

 

全体リハーサルは手順の確認はもちろん、移行に必要な時間なども把握します。移行にあたってはシステム停止などが必要となるため、S/4 HANAの利用者向けに案内を出さなければなりません。可能な限り業務影響を減らせるように、リハーサルの時間を踏まえて最小限の時間を案内します。また、全体リハーサルで許容できないほどの時間を要しているならば、移行方法の見直しが発生してしまいます。

6.本番移行

リハーサルまで問題なく完了すれば、後は本番移行を残すのみです。リハーサルの結果を踏まえて、確実に手順をこなしましょう。

6-1.移行作業

リハーサルを実施すると、本番移行の手順書が完成するはずです。その手順書をもとに本番作業を進めなければなりません。やるべき作業は明確になっており、特に問題は起きないはずです。

 

ただ、計画的に本番移行を進めるために、当日のスケジュール作成が求められます。S/4 HANAのような大規模なシステム移行は関係者の数が多くなるため、各々がいつ何をするのか明文化しておくことが重要です。また、システム移行には予期せぬ時間を要することがあるため、バッファも設けておきましょう。

6-2.トラブル発生時は切り戻し

本番移行にあたっては「移行作業が失敗する」という可能性を考慮しておくべきです。リハーサルをして手順が問題ないと確認できていても、何かしらのトラブルで失敗する可能性はあります。システム移行に絶対はないため、万が一に備えなければなりません。

 

もし、S/4 HANAへのシステム移行に失敗したならば、基本的には切り戻しが必要です。S/4 HANAを業務で利用するのではなく、今まで利用していたSAPを利用するなどの対応が求められます。事前に検討しておいた手順やルールに沿って、切り戻しするようにしましょう。

 

なお、切り戻しにも失敗してしまうと業務がストップしかねません。全体リハーサルの際に切り戻しに関する作業も含めておくことが理想的です。

7.まとめ

S/4 HANAへの移行で重要となる移行手順についてご説明しました。事前にスケジュールを立てて計画的に進めなければ、移行が遅延したり失敗したりする原因となります。

 

また、システム移行には遅延がつきものであるため、S/4 HANAへの移行も何かしら遅延するかもしれません。スケジュールには余裕を持たせておき、多少の遅延は吸収できるようにすべきです。

LINEで送る
Pocket

SAP案件紹介や独立前相談

ほとんどのSAPコンサルタントの方は、独立すると、まずは当社へご登録いただいております。

60秒で無料登録

案件情報やSAP技術情報を
気軽に受け取る

メルマガ登録

つの情報を送るだけで案件紹介へ

    御氏名
    メールアドレス
    電話番号
    生年月日

    つの情報を送るだけで案件紹介へ

      御氏名
      メールアドレス
      電話番号
      生年月日