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「S/4 HANAでクラウド化」No.11 SAP HANAへ移行する際はリハーサルが必須!具体的にやるべきことを解説

1.はじめに

S/4 HANAへシステムを移行する前にはリハーサルをしなければなりません。リハーサルは必須の作業であり、手を抜くと大きな問題につながりかねないものです。

 

非常に重要なフェーズではありますが、システムの移行リハーサルを経験していない人には難しい内容です。今回はS/4 HANAへシステム移行するにあたって必須のリハーサルについてご説明します。

2.S/4 HANAの移行で必要なリハーサルとは

基幹システムをS/4 HANAに移行するにあたっては、リハーサルを実施しなければなりません。いきなり データ移行に臨むと思わぬ トラブルが発生するかもしれません。

 

リハーサルの方法は大きく分けて2種類あり、簡易 リハーサルと全体リハーサルです。どちらかだけを実施すれば良いのではなく、それぞれの特徴を踏まえてどちらも実施する必要があります。

 

システム移行に詳しくない人から見ると「リハーサルにコストをかける必要があるのか」と考えてしまうかもしれません。ただ、リハーサルに力を入れなければトラブルの原因となりかねないため、必ず 注力するようにしましょう。

3.簡易リハーサル

簡易リハーサルは、その名の通り簡易な検証を実施するものです。具体的なリハーサル内容についてご説明します。

3-1.一部に着眼したリハーサル

移行の中でも一部にのみ着眼して実施するリハーサルです。全工程のリハーサルをする前に簡易リハーサルを実施して、特に問題になりそうな部分を潰しておきます。

 

一部にのみ着眼したリハーサルとなるため、リハーサル対象を事前に選定しておかなければなりません。システム的に検証しなければならない部分を中心に選定しましょう。例えば、新規に開発した機能やデータクレンジングした部分についてリハーサルします。

 

なお、簡易リハーサルにおいてどの程度の作業をすべきかに明確な基準はありません。プロジェクトの状況に応じて判断するようにしましょう。

3-2.テスト工程に組み込んで実施

簡易リハーサルはテスト工程に組み込んで実施します。リハーサルは独自のフェーズを設けるものですが、簡易リハーサルについてはテストの一環として実施しておきましょう。

 

テストの一環として実施する理由は、システム的な評価が中心になるからです。データ移行のリハーサルではあるものの、システム的な観点から実施されます。後になってプログラムやアルゴリズムの問題が発見されると大きなトラブルとなるため簡易リハーサルで評価しておきます。

3-3.状況に応じて複数回の実施

簡易リハーサルは必要に応じて複数回実施しましょう。最初から予定しておく必要はありませんが、期間にバッファを設け、複数回実施できるようにすべきです。

 

上記でも触れたとおり、簡易リハーサルではシステム的な問題がないか評価します。もし、問題があった場合は修正して再評価しなければなりません。その時に備えたスケジュールを立てておくべきなのです。

4.全体リハーサル

簡易リハーサルが問題なく完了すれば、システム開発が完了し全体リハーサルへと移ります。続いては全体リハーサルについてご説明します。

4-1.本番移行を想定したリハーサル

全体リハーサルは本番移行を想定したものです。S/4 HANAのような大規模なシステムを移行する際は、さまざまな作業が求められます。それぞれの作業について、全体リハーサルで確認するのです。

 

本番移行を想定しているため、実際に移行作業をすべて行います。どのような作業が必要となるか洗い出し、関係者も巻き込んで実施しなければなりません。非常に大規模なリハーサルになると考えておきましょう。

4-2.作業手順と作業時間の確定が目的

実際の本番移行を想定したリハーサルであり、「当日どの作業をどの程度の時間でできるか」を把握することが目的です。「作業手順と作業時間の確定」を常に意識しながらリハーサルを実施しましょう。

 

S/4 HANAの移行では大量のデータを扱い、作業時間が長時間になると予想されます。また、想定よりもさらに時間がかかることも考えられます。例えば、移行するデータの件数が多すぎて、予定よりも移行に時間を要してしまうのです。

 

実際の作業時間は全体リハーサルをしてみないと、分からない部分があります。そのような部分を洗い出すことも目的だと認識しなければなりません。

 

4-3.切り戻しのリハーサルも含める

全体リハーサルにあたっては「切り戻しのリハーサル」も実施すべきです。「切り戻し」とは、失敗してしまった場合に、元の状態に戻す作業を指します。

 

「リハーサルをしておけばトラブルが起きないのではないか」と考える人はいますが、システム移行は予期せぬトラブルが起きる可能性もあります。万が一に備えて切り戻しの手順も作成し、その内容についてもリハーサルしておかなければなりません。

4-4.本番移行の判定基準を設ける

必ず全体リハーサルの前に「本番移行の判定基準」を定めておきましょう。基準とは、「具体的にリハーサルでどのようなことが確認できれば本番移行へと進むのか」を指します。例えば、以下のような基準が考えられます

 

・データがすべて正確に移行されていること

・移行時間は8時間以内であること

・移行後のシステムレスポンスが3秒以内であること

 

これらは一例ですが、業務要件などを踏まえて基準を設けておきます。基準や具体的な設定値は状況によって変化するため、S/4 HANAのエンドユーザーや情報システム部門関係者など、有識者を集めて決定するようにしましょう。

5.リハーサルを実施する際のポイント

システム移行のリハーサルを実施する際にはポイントがあります。以下を意識しながらリハーサルを実施するようにしましょう。

5-1.作業結果はすべて記録

リハーサルの実施内容はすべて記録しなければなりません。上記でもご説明したとおり、リハーサルは本番移行作業の手順と時間を確定させるものです。後から「この時に何をしたのか分からない」との状況になってしまうと、S/4 HANAの移行に失敗するのはいうまでもありません。

 

また、追加で意識してもらいたいことは、時間の記録です。いつ作業を開始していつ完了したのかを把握するようにしましょう。画面キャプチャを取得するならば、日時も確認できるようにしておくと安心です。時間を記録できるように手順書へ記入欄を設けておくのも良いでしょう。

 

また、リハーサルの過程でトラブルが発生すると、それ以降の時間が確認できなくなります。まずはトラブルの解決を優先する必要があるため、一旦はそこまでの時間を記録しておき、後から誤認しないように作業途中で終了したことも明記しておきましょう。

5-2.事前に作業のフローチャートを作成

リハーサルを実施する前にフローチャートを作成しておくと安心です。例えば以下の内容です。

 

1.移行データの抽出@作業担当者

2.作業完了の確認@作業責任者

3.プログラムの配置完了連絡@SAPベンダー担当者

4.S/4 HANAへの移行データ投入@作業担当者&SAPベンダー担当者

 

このようなフローチャートを作成しておけば、どの順番で作業すべきか一目瞭然です。また、それぞれの担当者や責任者の出番も把握しやすくなり、タイムロスを防ぎやすくなります。

6.まとめ

S/4 HANAへ移行するためのリハーサルについてご説明しました。システム移行ではリハーサルに時間を割かなければ、移行に関するトラブルの発見ができません。関係者が多く負担のかかるフェーズではありますが、S/4 HANAの移行を成功させるため、丁寧に取り組みましょう。

 

また、リハーサルには簡易リハーサルと全体リハーサルがあります。それぞれ、目的が異なるため、内容を理解して準備や実行をしてください。

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