「SAP MMモジュールの教科書」No.4 MMで使用する主要マスタ(購買情報/供給元一覧/供給量割当)
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1.はじめに
SAP MMモジュールの教科書③と④では、2回に分けてMMモジュールに関連するマスタについてご説明しています。前回の『SAP MMモジュールの教科書③』では、モジュール横断で使用される品目マスタとビジネスパートナマスタについて解説しました。後半では、MMモジュール固有のマスタである購買情報マスタ、供給元一覧、供給量割当についてご説明します。
2.MMで使用する主要マスタ
以下は、MMモジュールで使用する主要マスタ一覧です。
3.購買情報マスタ
『購買情報マスタ』は、MMモジュールで使用されるマスタです。購買情報マスタの設定は、必須ではありませんが、マスタをメンテナンスしておくことで、購買伝票登録などのトランザクションで、マスタを参照して価格や納期情報を算出してくれるため、業務を効率化することが可能です。
購買情報マスタは、仕入先×品目ごとに価格や納期など調達業務に関わる情報を登録管理します。購買情報マスタ登録画面(トランザクションコード:ME21)では、まず第一画面上でキー項目、およびこ「購買情報カテゴリ」を入力します。キー項目は以下の3種類が存在するため、マスタを管理したい粒度で必要な項目のみ入力します。
ケース①:仕入先コード×品目コード
仕入先コードと品目単位で購買情報を登録します。特に組織を指定していないため、一般データのみ管理可能となります。
ケース②:仕入先コード×品目コード×購買組織
仕入先と品目に加え、購買組織までを指定するため、組織に依存する納入までにかかるリードタイムや価格などの情報を登録することができるようになります。
ケース③:仕入先コード×品目コード×購買組織×プラント
登録内容はケース②と同様ですが、購買組織に加えプラントまで指定することで、より細かい粒度での管理が可能となります。同一購買組織でもプラントによって購買に関する情報が異なる際に登録します。ケース②とケース③がどちらも登録されている場合、より粒度の細かいケース③の登録内容が優先して使用されます。
「購買情報カテゴリ」とは、登録する購買情報がどのような内容なのかは判別する項目です。基本的には、以下の4つから選択することができます。
「購買情報カテゴリ」の選択肢
標準:原材料や完成品などの品目を発注する取引を指します。ほとんどの購買業務がこの「標準」に当てはまります。
外注:必要な部品や半製品、原材料などを支給して加工を依頼する取引の場合は、この「外注」を選択します。購買情報マスタの金額情報には、外注加工費を登録します。
パイプライン:石油や水道などのパイプラインを通して供給される取引の場合は、この「パイプライン」を選択します。
受託品:在庫は自社に保管されていますが、所有者は仕入先である品目を受託品と言います。自社に保管している在庫を必要な時に必要な数量使用し、使った分だけ仕入先に支払いをする取引の場合は、この「受託品」を選択します。
3-1.一般データ
第一画面で、キー項目と「購買情報カテゴリ」を選択すると、一般データを入力する画面に移ります。ここでは、品目×仕入先ごとに登録します。
仕入先品目コード:品目コードとは別に仕入先で管理しているコードがある場合に入力します。
督促日数:仕入先に納入の督促を行う場合、納入予定日を基準に日数を設定することが可能です。
販売担当者:仕入先の担当者を入力します。
仕入先電話番号:仕入先の電話番号を入力します。
返品契約:返品可否を制御するためのフラグ項目です。
3-2.購買組織データ
購買組織データでは、品目×仕入先×購買組織単位で決定する情報を登録します。
納入予定日数:品目の調達リードタイムを日数で入力します。
購買グループ:調達を担当する購買グループを指定します。
標準数量:通常、該当品目を発注する際の数量を入力します。
最小発注数量:発注時の最小数量が決まっている場合に当項目を入力することで、入力値より少ない数量での購買ができなくなります。
最大発注数量:発注時の最大数量が決まっている場合に当項目を入力することで、入力値より大きい数量での購買ができなくなります。
不足納入許容:入庫数量が発注数量に対して不足している場合に、入庫を認める許容値を設定することができます。
過剰納入許容:入庫数量が発注数量に対して過剰である場合に、入庫を認める許容値を設定することができます。
入庫基準請求書:入庫数量に基づき自動で請求書照合を行う場合に設定するフラグ項目です。
3-3.条件
条件タイプごとに有効期間と金額を入力します。条件タイプとは、何の金額を表しているのかを区別するための項目で、正味価格以外に、運賃などの付随費用を登録することができます。
3-4.テキスト
テキスト情報を自由に入力することが可能です。テキスト情報には、購買情報メモと購買発注テキストの2種類が用意されています。購買情報メモは、購買情報マスタ上でのみ保持されるテキスト情報であるのに対し、購買発注テキストに登録した内容は購買伝票に引き継ぐことが可能です。
4.供給元一覧
『供給元一覧』は、品目を発注することができる仕入先の一覧を保持するマスタです。品目×プラントごとに設定します。供給元一覧は、登録画面(トランザクションコード:ME01)から手動で登録することもできますが、品目マスタ上で自動作成の設定を行うことも可能です。
手動で登録する場合、登録画面(トランザクションコード:ME01)では、まず品目と仕入先を入力する画面が開き、Enterキーを押すと供給元一覧を登録する画面に移ります。供給元一覧で入力する主要な項目は以下の通りです。
有効期間:各仕入先の供給可能な期間を「有効開始日」と「有効終了日」の項目で指定します。
仕入先:供給可能な仕入先コードを入力します。
購買組織:調達を担当する購買組織を入力します。
固定仕入先:固定仕入先フラグを設定することで、該当する仕入先が優先的に使用されます。
供給元ブロック:該当する仕入先からの購買を行わない制御を行うフラグ項目です。
5.供給量割当
『供給量割当』は、複数の仕入先から同一品目を調達する場合に、各仕入先からどれほどの配分で調達を行うのか品目×プラントごとに設定するマスタです。
登録画面(トランザクションコード:MEQ1)では、まず品目と仕入先を入力する画面が開き、Enterキーを押すと有効期間を登録する画面に移ります。有効開始日と有効終了日や最小分割数量などの必要項目を入力すると、次の画面で実際に仕入先ごとの配分をに%(パーセンテージ)で設定することができます。設定した供給量割当は、MRPや購買依頼など様々なプロセスで参照し適用することが可能です。
6.最後に
SAPは特にマスタ設定が重要なシステムで、適切なマスタ設定を行うことで業務をより効率化することができます。今回は、MMモジュールで使用する主要マスタのうち、MM特有である購買情報マスタ、供給元一覧、共有量割当について説明しました。供給元一覧、共有量割は、企業によっては使用しないこともありますが、どれもMMを担当する際は外せないマスタですので、知識をつけておくと良いと思います。