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ChatGPTがSAP業界に与える影響は?ABAPerの仕事は減るのか

はじめに

2022年の末に大ブレイクし、一気に世界中に広まった「Chat GPT」。Chat GPTは生成AI(ジェネレーティブAI)のひとつであり、文章だけではなくコーディングも自動化することができます。このことから、プログラマーの仕事が減るのではないか、などの予測が飛び交っているようです。今回は、Chat GPTがSAP業界、特にABAPerの仕事に影響を与えるのかについて考えてみたいと思います。

 

 

1.Chat GPTと生成AIについて

Chat GPTは、会話や文章を自動生成するAIです。人工知能研究を行う米国の団体「Open AI」が開発している言語モデル「GPT(Generative Pre-trained Transformer)」を採用しており、現在は最新のGPT3.5を搭載しているとのこと。

 

従来の言語モデルのように、事前学習や再学習を必要とせず、「自己教師学習」という手法を用いています。バックにあるGPTは、あらかじめ膨大なデータで学習済みの言語モデルであり、巨大な脳ともいえるGPTを誰もが気軽に利用できる点がメリットですね。

 

「~とは?」「~について教えてください」のような用語解説的な内容ならば、情報の精度も高く丁寧な文章を自動生成します。2022年11月に一般公開され、その後たった2か月で利用者が1億人を突破しました。ちなみに、利用者100万人までは1週間で到達しており、TiktokなどメジャーなSNSよりも圧倒的に速く広まっています。

 

1-1.Chat GPTの歴史

Chat GPTの歴史を簡単に振り返ってみましょう。

 

GPT-1: 2018年に発表された最初のGPTモデルで、1億2,000万のパラメータを持ち、文章生成タスクを中心に評価されました。

 

GPT-2: GPTシリーズの2番目のモデルで、2019年に発表されました。GPT-1よりもはるかに大きな1.5億個のパラメータを持ち、高度な文章生成や文章補完などのタスクを実行することができました。

 

GPT-3: 2020年に発表されたGPTシリーズの最新モデルです。パラメータ数1.75兆個を誇り、自然言語処理の幅広いタスクに対応することができます。

 

Chat GPT: GPT-3をベースに開発された自然言語処理モデルで、2021年に発表されました。文章生成タスクに加えて会話エージェントとしての機能に特化し、より人間らしい自然な会話を可能にすることを目的としています。

 

このように、Chat GPTは、GPTシリーズの最新の自然言語処理技術を取り入れた新しいモデルとして、その能力と可能性を高く評価されています。

 

1-2.Chat GPTの革新性

次に、Chat GPTの革新的な部分を整理してみます。

 

・自然な会話

大規模なトレーニングデータを利用することで、驚くほど自然な対話を生成できることはChat GPTの革新性のひとつです。過去の自然言語処理技術に比べても、より高度で柔軟な自然言語理解が可能であることが、自然な会話の生成を支えています。

 

・利活用の幅が広いこと

Chat GPTは様々な自然言語タスクに応用できることも強みです。例えば、文章生成、文書の分類、自動翻訳、会話エージェント、コーディングなどです。

 

 

2.Chat GPTがSAP業界に与える影響は?

さて、今回の本題ですが、Chat GPTがSAP業界にどのような影響を与えるのかという点について大まかに予想してみます。結論から言えば、「SAP業界への影響はかなり限定的」だと思います。

 

Chat GPTをはじめとして生成AIは、現在、基幹システム回りでの活用事例が見出されていません。特にSAP業界は、パッケージソリューションであるSAP ERPの導入と改修がメインであることから、悪く言えば「閉じた世界」です。この閉じた世界にChat GPTの機能を取り込むには、意図的に「口」を作らねばなりません。S/4 HANAには、AIとRPAを活用したデータ収集や検証の機能がありますが、これは生成AIとは性質の異なるものです。

 

ただし、Micro Softが提供するAzureでは、ローコード開発ツール「Power Apps」の中でGPTベースのAI「Copilot(コパイロット)」が実装されており、アプリ開発の補助をしてくれます。同様の機能が実装されないとも限らないので、完全に「ゼロ」ではないのですが、SAP ERPを中心としたシステムにChat GPTのような生成AIが必要かと問われれば、現時点ではユースケースが無いように思います。

 

2-1.アオドン開発の分野で導入の可能性も?

では、ABAPを用いたアドオン開発の分野では、Chat GPTによるコーディングの効率化が可能なのでしょうか。

 

Chat GPTは、ABAPでのコーディングには直接関係がありません。現時点では、簡単なサンプルコードを記述できるだけであり、業務利用に耐えるコードの生成にはそれなりの手間がかかります。この手間は、熟練のABAPerならば比較的容易に乗り越えられますが、今までどおり作業したほうが効率は良さそうです。

 

一般的に、Chat GPTを利用するには、Pythonやその他のプログラミング言語を使用してAPIを呼び出す必要があります。APIは、Chat GPTによって生成されたテキストを返すことができます。そのため、Pythonなどのプログラミング言語でAPIを呼び出すことができる場合は、Chat GPTをABAPと組み合わせることもできるでしょう。

 

つまり、ABAPとChat GPTを組み合わせる場合には、中間のプログラミング言語を使用せねばならないのです。例えば、PythonでAPIを呼び出し、その結果を別の形式に変換してからABAPに渡すことができます。

 

ちなみに、Chat GPTとは違いますが、コード生成AIとしては「blckbx.ai」などが有名です。blckbx.aiは、Python、JavaScript、TypeScript、Go、Rubyなどの20 以上のプログラミング言語で使用できるオートコンプリート機能が売りで、コーディング作業を強力にサポートしてくれます。ABAPにも同様のツールが登場すれば、アドオン開発はかなり楽になるかもしれません。

 

 

3.AIはSAP ERPにも続々と組み込まれていく

SAP でも独自に生成AIと似たような効果を持つAIを開発しています。例えば、データセットから将来のイベントを予測する「SAP Analytics Cloud」や、意思決定や文書処理をサポートする「SAP Process Automation」がありますよね。これらはS/4 HANAとの連携を前提として作られているため、今後のSAP ERPでは当たり前のように使われる可能性が高いです。

 

現在はまだ「分析・調査型」のAIであり、生成AIとは性質が異なるものですが、将来的にはわかりません。長年にわって蓄積された企業内ビッグデータから瞬時に最適な製造・販売スケジュールを生成する機能などが実装されれば、生成AIに近いものになりそうです。

 

今後はモジュールの知識とともに、AIの扱いに関するスキルも必要になるかもしれませんね。

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