インテリジェントエンタープライズの実現:SAPが目指す未来とその要素技術
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【コラム監修者 プロフィール】
クラウドコンサルティング代表取締役 岸仲篤史
新卒でSAPジャパン株式会社に入社。
SAPジャパン在籍中にCOコンサルとして従事したことで、会計コンサルの面白さに目覚め、
大和証券SMBC株式会社 投資銀行部門、新日本有限責任監査法人、アビームコンサルティングにて、
一貫して約10年間、会計金融畑のプロフェッショナルファームにてキャリアを積む。
その後、2017年クラウドコンサルティング株式会社を設立し、SAPフリーランス向けSAP free lanceJobsを運営し、コラムの監修を手掛ける。
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はじめに
デジタルトランスフォーメーションが急速に進む現代、企業は競争力を維持するために、継続的なイノベーションが求められています。
このような課題に応えるべく、SAPは「インテリジェントエンタープライズ」というビジョンを掲げました。
本稿では、SAPが目指すインテリジェントエンタープライズの未来像と、その実現を支える要素技術について詳しく解説します。
1.SAPが目指すインテリジェントエンタープライズの未来像
インテリジェントエンタープライズとは、最新の技術と業務アプリケーションを融合させ、業務プロセスを自動化しながら、持続可能な成長を可能にする企業を指します。
SAPが提唱するインテリジェントエンタープライズの中核は、データ、プロセス、テクノロジーを統合し、意思決定の質とスピードを向上させることです。
従来の静的な業務管理ではなく、リアルタイムな洞察に基づき、動的なビジネス運営を可能にすることで、市場の変化に迅速に対応し、新たな価値を創出することができます。
この未来像では、次の3つの要素が特に重要です。
・データドリブンな意思決定
組織内外の膨大なデータをリアルタイムで統合・分析し、経営層から現場レベルまでの迅速な意思決定を支援。
・業務プロセスの自動化と最適化
AIや機械学習を活用して反復的なタスクを自動化し、効率化を図るとともに、業務プロセス全体を最適化。
・持続可能性の確保
環境、社会、ガバナンス(ESG)の目標を組み込んだビジネスモデルを実現し、持続可能な成長を推進。
2.インテリジェントエンタープライズを支える要素技術
インテリジェントエンタープライズの実現には、最新技術を効果的に活用することが不可欠です。
以下では、SAPが提供する主要な要素技術について詳しく見ていきます。
2-1.SAP Business Technology Platform(BTP)
BTPは、インテリジェントエンタープライズを支える基盤技術であり、データ管理、アナリティクス、アプリケーション開発、拡張機能を担います。
・データ統合
SAP Data Intelligenceを活用して、SAPシステムと非SAPシステムからデータを統合し、クリーンで信頼性の高いデータを提供。
・リアルタイム分析
SAP HANAを基盤とした高速なデータ処理で、リアルタイムの意思決定を支援。
・アプリケーション開発
SAP Buildを利用して、ローコードまたはノーコードで業務アプリケーションを迅速に開発可能。
2-2.SAP S/4HANA
SAP S/4HANAは、インテリジェントエンタープライズの中核をなすERPソリューションです。
業務全体を統合してリアルタイムの洞察を提供します。
・予測分析: AIと機械学習を活用し、需要予測やリソース最適化を支援。
・プロセスの自動化: 業務プロセスを自動化し、反復的なタスクの負担を軽減。
・業務の可視化: ダッシュボードやレポート機能を通じて、経営層がビジネス全体を直感的に把握可能。
2-3.SAP Analytics Cloud
SAP Analytics Cloudは、企業がデータドリブンな意思決定を行うための分析ツールです。
データの可視化と分析が容易になり、迅速かつ正確な判断をサポートします。
・統合アナリティクス: SAPデータと外部データを統合し、包括的な洞察を提供。
・予測分析: 機械学習モデルを組み込み、未来のトレンドやリスクを予測。
・セルフサービスBI: ユーザーが自ら分析を行い、ビジネス上の意思決定に活用。
2-4.AIと機械学習
AIと機械学習は、インテリジェントエンタープライズの中心技術であり、業務プロセスの自動化と最適化を支えます。
AIの導入により、業務の効率化だけでなく、新たなビジネスチャンスの発見も可能になります。
・予測モデリング: 需要予測、サプライチェーン最適化、顧客行動分析に活用。
・自動化アシスタント: SAP AI Foundationを活用し、カスタマイズ可能なAIモデルを構築。
・チャットボット: SAP Conversational AIで顧客対応や社内サポートを効率化。
2-5.持続可能性を支える技術
持続可能性は、インテリジェントエンタープライズの重要な要素です。SAPでは環境への影響を最小限に抑えながら成長を続けることができます。
・SAP Sustainability Control Tower: 持続可能性目標の追跡とレポートを統合管理。
・カーボンフットプリント分析: 業務プロセスごとの排出量を追跡し、削減のための洞察を提供。
・循環型経済サポート: リソースの効率的な利用と再利用を支援。
3.インテリジェントエンタープライズの導入によるビジネスインパクト
インテリジェントエンタープライズを実現した企業は、次のようなビジネスインパクトを享受できます。
・効率性の向上: 業務プロセスの自動化により、コスト削減と業務スピード向上を同時に実現。
・顧客体験の向上: 顧客のニーズをリアルタイムで把握し、より迅速かつ適切な対応が可能に。
・俊敏性の強化: 変化する市場環境に迅速に対応し、競争力を維持。
・持続可能性の実現: 環境負荷を抑えながら、企業としての社会的責任を果たす。
まとめ
SAPが提唱するインテリジェントエンタープライズは、デジタルトランスフォーメーションの次のステージと言えます。
企業が持続可能な競争力を維持するための鍵となるビジョンです。
その実現には、SAP Business Technology Platform、SAP S/4HANA、AI、持続可能性技術といった要素技術が欠かせません。
これらの技術を効果的に活用することで、データを活かした意思決定を迅速に行い、持続可能なビジネスモデルを構築できます。
インテリジェントエンタープライズの未来は、SAPの技術とともにますます広がり続けています。