【中小企業のSAP】DXの先を見据えたSAP重視のデータ分析基盤
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【コラム監修者 プロフィール】
クラウドコンサルティング代表取締役 岸仲篤史
新卒でSAPジャパン株式会社に入社。
SAPジャパン在籍中にCOコンサルとして従事したことで、会計コンサルの面白さに目覚め、
大和証券SMBC株式会社 投資銀行部門、新日本有限責任監査法人、アビームコンサルティングにて、
一貫して約10年間、会計金融畑のプロフェッショナルファームにてキャリアを積む。
その後、2017年クラウドコンサルティング株式会社を設立し、SAPフリーランス向けSAP free lanceJobsを運営し、コラムの監修を手掛ける。
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はじめに
中小企業でもDXが進み、SAPなどDX化に役立つシステムが導入されるようになりました。
皆さんの企業でも、中小企業向けの「SAP Business One」などを導入しているのではないでしょうか。
経営の効率化に向けて、幅広い取り組みを進めている企業が多く見受けられます。
このような状況下で新たな課題として挙がっていることが「DX後のデータソース統合」です。
特に、社内で複数のシステムを導入している場合、これらの情報連携ができていないケースが見受けられます。
また、その結果、問題が生じてしまうケースも多いのです。
今回は、中小企業におけるDXの一歩先として、データ統合を解説します。
1.DX化だけでは構築できていないデータの活用プロセス
中小企業においてもSAPなどを導入するDX化が進められ、データを集約する動きが見られました。
特に2025年の崖を見据えて、本腰を入れて対応した企業が多い状況です。
その結果、新しいシステムが導入され、世の中の業務プロセスは大きく改善しています。
ただ、業務プロセスは改善したものの、データの活用プロセスは確立できていません。
例えば、中小企業でも製造業などで海外とやり取りが多い場合、これらと連携が取れていない状況が見受けられます。
全体として「データドリブンな経営」を目指す必要がありますが、既存のDX化だけではここまで考慮できていないのです。
これは一例ですが、横断的なデータ分析ができる基盤が整っていないと、DX化を実現したメリットが薄れてしまいます。
データドリブンな経営を実現するためにも、次なる一歩として、改善を目指していかなければなりません。
2.企業のDXは一歩先へ
これまで中小企業では「システム化と業務プロセスの見直し」を組み合わせたDXが推進されてきました。
日本全体でDXが推進されていたこともあり、前向きに取り組みした企業も多いでしょう。
ただ、中長期的な成長を目指すのであれば、DXだけでは不足していると考えられます。
本記事のシリーズでも繰り返し解説していますが、中小企業においてもデータドリブンが必要です。
特に中小企業でも複数のシステムを導入しているならば、それぞれのデータを繋いで判断することが求められます。
一般的なDXやそれに関連するSAPの導入だけでは不足している部分があるため、データを統合するツールの活用を意識しなければなりません。
3.SAP Datasphereを用いたデータソースの一元管理
もし、SAPを軸とするならば「SAP Datasphere」の活用を検討します。
3-1.SAP Datasphereによる一元管理
SAP Datasphereを活用することで、SAPと他のシステムを組み合わせながら、すべてを一元管理しやすくなります。
そもそも、SAPを導入して業務プロセスを決定する場合、基本的な方針は「SAPに全てのデータを集約する」だといえます。
ただ、実際にはSAP Business OneやSAP HANA Cloudなどのシステムに加えて、関連するシステムの「Salesforce」などが導入されていることが多々あるでしょう。
その結果、データをSAPのデータベースに集約しようとしても、実際には難しいという状況に陥るのです。
特に、SAPとは別のクラウドサービスを導入していると、業務的にデータベース自体の統合ができなくなります。
そのため、業務プロセスとは別に、データを集約するための基盤を別に準備しなければなりません。このときのソリューションはいくつもありますが、良い選択肢として「SAP Datasphere」が挙げられるのです。
3-2.データドリブン経営に向けた基盤の構築
SAP Datasphereは、SAPのデータベースのみならず外部のデータベースからも連携できるため、全体を一元管理しやすくなります。
言い換えると、SAP Datasphereを利用すれば複数のシステムを利用しても、簡単にデータ分析に向けたモデルの作成が可能になるのです。
業務プロセスを無理やり修正しSAPに統合しなくとも、データだけを抜き出し、データドリブンな経営に活かせます。
このような統合されたデータ基盤があれば、中小企業でも、BIツールなどを駆使しやすくなるでしょう。
DX化の先に出てくる課題である「データドリブン経営の実現ができていない」という部分の解決が近づくのです。
4.SAP Analytics Cloudと関連するBIツールの組み合わせ
SAPを利用する中小企業では、SAP Analytics CloudをBIツールとして導入するケースが多くあります。
SAP Datasphereにデータを集約し、ここから各種資料を作り出すとイメージしましょう。
ただ、複数の拠点を有している場合は、SAP Analytics Cloudで管理することに手間が生じるということがある状況です。
そのため、SAP Analytics Cloudを中心に据えながらも、それぞれの拠点ごとにBIツールを導入するなどの使い分けを検討しなければなりません。
もちろん、拠点ごとに利用するBIツールが増えすぎてしまうと、DXを推進した意味が薄れてしまいます。
拠点ごとに属人化が生じてしまい、柔軟なデータ活用ができません。
つまり、業務を統一化することが難しくなってしまいます。
そのため、全社的に利用する資料は「SAP Analytics Cloud」、拠点の中で完結する資料については「個別のBIツール」などのルール決めが重要です。
5.組織内でデータを公開する体制づくり
中小企業で意外と課題になるポイントに「他部門の保有しているデータを参照できない」ということが挙げられます。
それぞれの部門が独自にシステムを導入しているため、これが外部に連携されていないのです。
例えば、製造部門のデータをマーケティング部門が参照できないということが生じます。
そして、この状況の弊害として、適切な納期をクライアントに提案できないなどの問題が発生するのです。
ただ、実際には公開してはいけないデータはごく一部であり、全社的にデータを共有すべきケースが大半です。
そのため、SAP Datasphereのようなデータ分析基盤を作成し、基本的には全ての従業員が閲覧できる仕組みとすべきです。
これにより、全社的なデータドリブン経営を進めやすくなります。
部門間で共有することで、お互いが意味のあるデータを参照しやすくなり、各部門がデータに基づいた判断を下せるようになるのです。
一般的にデータドリブンといえば「経営層など一部の人が利用する」とのイメージを持たれます。
しかし、中小企業においては全部門の全従業員がデータに触れ合うことを意識すべきです。
まとめ
DXの推進によって、中小企業においてもSAPなどのツールを導入し運用することが増えてきました。
皆さんの中にも、何かしらのクラウドソリューションを導入している人がいることでしょう。
ただ、これはDXの足がかりであり、実際には業務の変革やデータドリブン経営まで進めていかなければなりません。
この部分については取り組めていない中小企業が多く見受けられるため、「SAP Datasphere」などのデータ分析基盤を導入し、データドリブンな経営へシフトすべきです。