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【第2回】SAPはなぜ多くの企業が導入している?採用の理由や他製品との違いを解説

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【コラム監修者 プロフィール】

 

薮内貴之

SAPベーシスを中心に、SAP導入やインフラ・インタフェース設計を担当。

大手企業のベーシスから出荷まで幅広く支えつつ、周辺システムの設計や運用サポートを経験。

現在は単純なSAPのみならずAWSなどクラウドのインフラを含めてサポート。

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初めに

ERPシステムは数多くありますが、それらの中でもSAPは特に導入数が多いと考えられています。

実際、SAPを導入している企業を見かけることは多いでしょう。

今回は、SAPの初心者に向けて、なぜ多くの企業がSAPを導入しているのか、その理由や他製品との違いを解説します。

 

 

 

1.SAPは世界的な導入数の多い製品

SAPはERP(統合基幹業務システム)市場において、世界的に圧倒的なシェアを誇る製品です。

1972年にドイツで設立されたSAP社は、製造業を中心に多くの大企業に選ばれています。

また、現在では中小企業向けのソリューションも提供し、さらに多くの企業が導入するようになりました。

導入実績は180カ国以上、40万社を超え、国際的な業務や会計基準にも対応できる点が評価されています。

 

また、SAPの標準機能は非常に幅広く、販売・購買・在庫・生産・財務・人事など、企業活動の中核を成す機能を一元的にカバーしています。

ひとつのアプリケーションでも網羅できることで、業務の効率化と可視化を実現しやすいことがポイントです。

これは一例ですが、独自の特長により、数多くのグローバル企業がSAPの導入を推進しています。

 

 

 

2.世界的にSAPが選ばれる理由とは?

SAPは単に機能が豊富なだけでなく、企業の戦略的成長を支える土台となるERPとして進化し続けています。

世界中の企業がSAPを導入している背景には、技術面・業務面の両方における強みがあると考えて良いでしょう。

理由となる「SAPの強み」について解説します。

 

 

2-1.理由①:グローバル展開に強い

SAPはグローバル展開に強く、これらが特に大企業で採用される理由と考えられます。

具体的には、多言語・多通貨・多国税制への対応が標準で実装されたソフトウェアです。

そのため、グローバルにビジネスを展開する企業にとって、非常に有用な製品と考えられます。

 

たとえば、現地法人での業務処理は現地言語・会計基準でおこないながら、本社では統一されたデータで状況を把握するなどの使い方が可能です。

これにより、経営判断に必要な情報を本社でリアルタイムに把握できます。

 

また、グローバルコンプライアンスにも配慮された製品です。

そのため、国ごとの法制度変更にも柔軟に対応できるように考えられています。

グローバル対応は数多くありますが、多角的な機能が評価され、多国籍企業の標準ERPとして選ばれやすくなっています。

 

 

2-2.理由②:業界特化型テンプレートの豊富さ

SAPには、製造業、流通業、小売業、医薬品、公共機関など、各業種・業態ごとに最適化されたテンプレートが数多く用意されています。

これを活用することで、業界固有の業務プロセスや法規制、業界標準への対応がスムーズにおこなえるのです。

また、事前に準備されているため、導入期間の短縮や初期コストの抑制も実現できます。

 

しかも、それぞれのテンプレートは、既にその業界で実績のある設定がベースとなっています。

つまり、信頼性が高く、業務効率化や競争力強化に繋げやすいのです。

SAPの偏見ではなく、業界に関する知識が深いエンジニアが作成している点もポイントといえます。

 

なお、現在は「インダストリーソリューション」として、提供方法が少しずつ変化してきました。

導入するSAPによって扱いも異なるため、細かい点は最新情報を確認してください。

 

 

2-3.理由③:統合されたデータ管理基盤

SAPは、部門横断的なデータを統合管理できる基盤を提供しています。

これにより、情報のサイロ化を防ぎやすいことも、広く支持される大きな理由です。

たとえば、販売データがリアルタイムで在庫・生産・財務部門に共有できるため、需給調整やキャッシュフローの管理などを正確かつ迅速に実施できます。

 

また、データを一元管理できることで、統合されたデータに基づくレポーティングや分析も容易です。

大量のデータに基づいた「データドリブン経営」を実現でき、経営判断のスピードや精度を向上させられます。

こうした仕組みを自社で構築することは難しく、仕組みづくりに役立つSAPが求められているのです。

 

 

2-4.理由④:高い拡張性とクラウド対応

SAPはモジュール単位で機能をカスタマイズできることが特長です。

そのため、企業の成長や変化に応じて、システムを柔軟に拡張できます。

 

加えて、近年ではクラウド版のSAP S/4HANA Cloudが登場しました。

これにより、オンプレミス型からクラウド型への移行が容易になっています。

従来よりもインフラの管理コストを抑えつつ、最新機能を迅速に活用できる環境が整いました。

 

クラウドを活用することで、ソフトウェアのみならずインフラ的にも高い拡張性を手に入れられます。企業の規模や要件に応じたソフトウェアを導入しやすい点は、他のEPR製品より勝っているポイントです。

 

 

2-5.理由⑤:豊富な実績とサポート体制

SAPは導入実績が豊富であると同時に、パートナー企業やコンサルタントのネットワークも世界中に広がっています。

そのため、自社に合った導入支援や運用サポートを受けやすい点が特長です。

 

さらに、SAP自体が定期的にベストプラクティスや業界動向を反映したアップデートを提供しています。

これを反映させることで、企業は常に最先端の業務プロセスを取り入れることが可能です。

 

このようなサポート体制は、日本の製品に多く見られます。

そのため、SAPが特別というわけではないでしょう。

ただ、SAPはグローバルにサポート体制を整えているため、その点でグローバル企業に評価されがちです。

 

 

 

3.DXや国際化の潮流がSAP導入を後押し

DXや国際化の潮流が、世界中でSAPが導入される背景にはあります。

 

 

3-1.日本も世界に追いつきDXが浸透

近年、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進められています。

そういった背景があり、業務のデジタル化やクラウド移行、グローバル経営への対応が急務となってきました。

従来の部分最適な業務システムでは全社的な変革に対応できなくなっているのです。

 

中でも、統合基盤であるERPへの関心が高まっています。

その状況で、SAPは信頼性と柔軟性の高さから導入が進められるようになりました。

特に、国際会計基準(IFRS)や電子帳簿保存法といった制度に対応している点が、日本国内では評価されています。

全体として、SAPは先進的な規制などに対応しているため、多くの企業がDXの一環でSAPを導入するようになりました。

 

 

3-2.ESGやサステナビリティへの対応

ESGやサステナビリティへの対応が求められ、サプライチェーン全体の透明性や環境負荷の見える化も必須になってきました。

SAPならばこれを実現するため、社会的な責任を果たすという意味合いでも、SAPが選ばれています。

 

今後の企業経営において、SAPのような統合型プラットフォームは、ますます重要な役割を担うでしょう。

導入は単なるシステム刷新ではなく、経営変革の一環として捉えられる時代に入っています。

 

 

 

4.SAPの導入が必ずしも最適とは限らない

解説したとおり、SAPには多くの魅力があり、それを目的に多くの企業が導入しています。

ただ、ERP製品の中でもSAPが最適とは限りません。

以下では、SAP導入において注意すべきデメリットについて説明します。

 

 

4-1.コストが高額になりがち

SAPを導入すると、イニシャルコスト・ランニングコストとも、高額になりがちである点に注意しましょう。

ライセンス費用、開発・設定費用、インフラ整備費用など、さまざまなコストがかかります。

クラウドの登場により負荷は軽減されましたが、それでもコストの高さはデメリットになりかねません。

さらに、運用後も保守費用やアップグレード対応、ユーザー教育などのランニングコストが必要です。

 

特に自社に合わせたカスタマイズが必要な場合、イニシャルコストが膨らむことが多くあります。

大企業ならまだしも、中小企業にとっては大きな負担になりかねません。

そのため「投資対効果が見合わない」という判断に至るケースもあります。

 

 

4-2.導入時の設計が難しい

SAPは非常に柔軟で強力なシステムであることが魅力です。

その反面、導入では詳細かつ高度な設計が求められます。

自社の業務プロセスを正確に分析し、適切なモジュール選定やパラメータ設定を進めなければなりません。

設定ミスがあると、期待した効果が得られなくなってしまいます。

最悪の場合、業務の混乱を招くリスクが高まるのです。

 

また、導入期間が長くなる傾向があり、社内の業務との並行対応や教育も大きな課題となるでしょう。

日々の業務で負荷が高まると、SAPの導入に向けた作業がおろそかになるかもしれません。

結果、設計が曖昧なまま導入が進み、使い物にならないということも考えられます。

 

 

 

5.SAPと他ERP製品との違いや優位性

ERP市場にはさまざまな選択肢が存在し、たとえばOracle ERP Cloud、Microsoft Dynamics 365が挙げられます。

また、国内製品ではOBIC7や勘定奉行、freeeなども選択肢として考えられるでしょう。

これらの製品もそれぞれに強みを持っているため、SAPとの違いや優位性を解説します。

 

 

5-1.他製品にはないグローバル対応力

SAPは多言語・多通貨・多国税制への対応が標準装備されています。

つまり、世界中での業務展開を前提とした設計が特長です。

他のERP製品も一定のグローバル対応はあるものの、SAPは国際的な会計基準や複雑な貿易取引にも柔軟に対応でき、頭ひとつ抜けています。

 

 

5-2.インメモリ技術で経営判断を加速

SAPの中核となる「S/4HANA」は、インメモリデータベースによってリアルタイム処理を可能としています。

これにより、業務データや経営指標を即座に可視化できる点が大きな強みです。

たとえば、急な需要変動やサプライチェーンの断絶といった事態にも、即応できる体制を整えられます。

スピード感が求められる現代の経営において、このリアルタイム性は他製品と大きく差別化できる要素です。

 

 

5-3.拡張性と業界特化型テンプレートの豊富さ

SAPはモジュール単位で柔軟に機能を追加でき、また各業種ごとのテンプレートが豊富に用意されています。

このようなテンプレートの充実度は、競合ERPと比べても大きな強みです。

 

もちろん、テンプレートだけですべての業務を遂行できるとは断言できません。

しかし、テンプレートの有無は、利便性を大きく左右します。

 

 

 

まとめ

SAPは世界中で信頼されているERPシステムで、多言語対応・業界テンプレート・統合データ基盤など、多くの魅力的な特徴を備えています。

特にグローバル展開を見据える企業にとって、強力な経営基盤となるでしょう。

 

ただ、導入には高額なコストと設計の難しさが伴ってしまいます。

そのため、企業の規模や業務内容によっては他のERP製品の方が適しているかもしれません。

SAPは多くの企業が導入する製品ですが、企業のビジネス戦略と照らし合わせながら慎重に判断することが重要です。

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