基本機能編:SAPでできること_【第1回】SAPの活用シーンとは?代表的なモジュールと役割を解説
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【コラム監修者 プロフィール】
薮内貴之
SAPベーシスを中心に、SAP導入やインフラ・インタフェース設計を担当。
大手企業のベーシスから出荷まで幅広く支えつつ、周辺システムの設計や運用サポートを経験。
現在は単純なSAPのみならずAWSなどクラウドのインフラを含めてサポート。
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はじめに
企業活動において会計、人事、販売、在庫、生産といった基幹業務は、どれも欠かせません。
しかし、部門ごとにシステムが分断されていると、データの不整合や作業の重複が発生し、経営判断のスピードや正確性に大きな影響を与えます。
そこで注目されるのが、世界中の企業で採用されている統合型ERPシステム「SAP」です。
SAPは財務管理から人材管理、販売、生産、物流に至るまで幅広い業務領域をカバーできます。
また、それぞれのモジュールが相互に連携することで、企業全体の効率化と競争力強化が可能です。
SAPの代表的なモジュールの役割と、実際にどのように活用されているのかを解説します。
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1.SAPは総合的な製品

SAPは世界中の大企業から中小企業まで幅広く導入されているERP(Enterprise Resource Planning:基幹業務システム)の代表格です。
ERPとは、企業の基幹業務を一元的に管理し、部門ごとの情報をつなげる仕組みを指します。
従来は会計、人事、販売、在庫管理といった業務ごとに異なるシステムを利用することが一般的でした。
そのため、データが分断され、業務効率の低下や情報の不整合が課題となっていたのです。
対して、SAPは、財務、在庫、販売、生産、人事、プロジェクトなど、企業活動に必要な領域を幅広くカバーする「モジュール」群を備えています。
そして、それぞれが連携することで「全社的な情報の一元化」を実現できるのです。
2.SAPの代表的なモジュール概要
SAPには非常に多くのモジュールがあり、それらから代表的なものをピックアップして紹介します。
2-1.会計管理モジュール(FI):企業の財務管理を一元化
FI(Financial Accounting)は、企業の財務状況を正確かつリアルタイムに把握するためのモジュールです。
売上や仕入、経費といった取引を自動的に仕訳し、総勘定元帳へ反映します。
これにより月次・年次決算のスピードが向上し、担当者の負担軽減や経営層のタイムリーな状況把握を実現可能です。
さらに、会計管理モジュールは、各国の会計基準に対応できます。
そのため、グローバル展開している企業にとってもデータを集約できることがポイントです。
他にも、内部統制や監査対応の観点からも、正確な財務データの一元管理は大きな価値を持ちます。
2-2.在庫・購買管理モジュール(MM):資材管理とコスト削減
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MM(Materials Management)は、購買から在庫管理までの資材調達プロセスを一元管理します。
従来は紙ベースや複数のシステムで管理されていた発注や仕入れを統合し、適正在庫を維持しながらコスト削減が可能です。
たとえば、原材料の発注をリアルタイムで記録できます。これにより、在庫数や仕入コストを即座に把握でき、生産計画や販売計画と連動させることが可能です。
無駄な在庫や二重発注を防ぐことにより、資金効率の改善に直結します。
2-3.販売管理モジュール(SD):受注から請求までを一元管理

SD(Sales and Distribution)は、顧客からの受注処理、出荷、請求書発行までを一気通貫で管理するモジュールです。
営業担当が受注を登録すると、自動的に在庫や生産部門と情報が連携し、出荷準備を開始できます。
その後、請求書発行まで一貫してデータがつながるため、処理のスピードと正確性が大幅に向上する仕組みです。
また、顧客ごとの販売履歴や支払い状況も管理できます。
これを活用することで、営業戦略やアフターサービスを充実させることなども可能です。
2-4.生産管理モジュール(PP):製造業の効率化を支える

PP(Production Planning)は、製造業の生産計画から実績管理までを統合的に支援するモジュールです。
需要予測に基づく生産計画を作成し、部品表(BOM)や作業工程(ルーティング)に基づいて現場のオペレーションを制御します。
PPで制御することにより、生産ラインの稼働率を最大化し、納期遵守やコスト最適化の実現が可能です。
販売管理(SD)や在庫管理(MM)と密接に連携し、需給バランスを保ちながら効率的な生産を可能とします。
2-5.人事管理モジュール(HR):社員のライフサイクルを管理
HR(Human Resources)は、社員の採用から退職までのライフサイクルを管理するモジュールです。
勤怠管理、給与計算、人材育成、評価制度などを一元化することで、人的資源の最適活用を支援します。
特に大規模組織においては、数千人規模の従業員情報を正確に管理しなければなりません。
近年はクラウドサービスを利用することも増えましたが、SAPに集約するとデータを活用しやすくなります。
なお、クラウド型の「SAP SuccessFactors」が登場したことで、SAPだけで人材戦略を立てやすくなりました。
2-6.プロジェクト管理モジュール(PS):プロジェクトの進行を可視化
PS(Project System)は、製品開発や大規模工事など、長期にわたるプロジェクトの進捗を可視化するためのモジュールです。
予算設定、リソース配分、進行状況のモニタリングを行い、計画と実績の差異を把握できます。
このモジュールを活用することで、予算超過や納期遅延を防止しやすくなります。
つまり、プロジェクトの成功確率を高めることが可能なのです。
正常業、建設業、IT業界など、プロジェクト単位で業務が進む環境では特に有用です。
2-7.サプライチェーン管理モジュール(SCM):物流の最適化
SCM(Supply Chain Management)は、原材料の調達から製品出荷までのサプライチェーン全体を統合管理するモジュールです。
需要予測や在庫情報をもとに物流計画を最適化し、コスト削減と顧客満足度向上を両立します。
今の時代、物流の効率化は競争力の源泉となりえるでしょう。
リアルタイムで情報を収集できるSCMモジュールは、需要の変動などに対応が求められる現代に最適です。
3.各モジュールは連携しあって活用される

SAPの最大の強みは、これらのモジュールが単独で機能するだけでなく、シームレスに連携している点です。
たとえば、販売管理(SD)で受注が発生すると、自動的に在庫(MM)が更新され、不足分は購買発注プロセスが開始されます。
同時に、生産管理(PP)に生産指示が出され、財務(FI)に売上や原価が反映されるのです。
このように、部門を横断してデータがつながることは「ひとつのデータベース」にデータを集約するSAPだからこそです。
企業全体の業務効率が大幅に向上し、経営判断の精度も高まります。
4.SAP多様なモジュールで幅広い活用が可能
SAPは製造業、流通業、サービス業などあらゆる業種で利用されています。
製造業では生産と物流の最適化、流通業では在庫回転率の改善、サービス業では人材管理や顧客対応の効率化など、それぞれの業界に特化した活用が可能です。
さらに、クラウド版の「SAP S/4HANA」を利用することで、導入コストを抑えつつ最新の機能を利用でき、中堅・中小企業でも導入しやすい環境が整っています。
AIやデータ分析との連携により、今後ますます活用の幅は広がっていくでしょう。
まとめ
SAPは、企業の基幹業務を統合し、データの一元管理を可能にする強力なERPシステムです。
FI、MM、SD、PP、HR、PS、SCMといった代表的なモジュールは、それぞれ独立して機能します。
ただ、同時に相互に連携し、企業全体の効率化と競争力強化を実現できるものです。
グローバル展開を目指す企業や、多様な業務プロセスを抱える組織にとって、SAPの導入は大きなメリットがあります。
自社にとってどのモジュールが最も効果を発揮するか、検討してみてはいかがでしょうか。
もし、導入やモジュールの検討にお困りならば、SAPコンサルタントの活用がおすすめです。
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