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    「SAP FI概要の教科書」No.2 AP編

    ■はじめに
     
    前回はFIモジュールの概要として、FI-GL(総勘定元帳)の特徴を5つご紹介させていただきました。今回は、FIのサブモジュールであるAP(債務管理)について概要を説明いたします。
     
    ■FI-APの主な機能
     
    1.仕入先マスタ(S/4HANAよりBPマスタに統合)
    SAPシステムでは、原料・資材などの購入先を「仕入先マスタ」で管理し、商品等の販売先を「得意先マスタ」で管理します。従って債務管理で管理するマスタは「仕入先マスタ」になります。また、MM(在庫/購買管理)モジュールと共有するマスタとなります。
     
    仕入先マスタは以下のように3つのエリアで構成されています。
     
    クライアントレベル(仕入先コードがキーになっているテーブルで管理)
    名称・住所など仕入先固有の情報を管理します。
    会社コードレベル(仕入先コードと会社コードがキーになっているテーブルで管理)
    FIで必要な情報を管理します。その仕入先コードに債務を計上する場合の勘定科目(統制勘定)を、1つを設定します(買掛金あるいは未払金等)。また、FI伝票に対する初期値として支払方法(銀行振込、支払手形等)等を設定します。
    購買組織レベル(仕入先コードとMMモジュールの組織である購買組織がキーになっているテーブルで管理)
    MMで必要な情報を管理します。MM伝票に対する初期値として、購買発注通貨や支払条件(月末締め翌月末払、等のこと)を設定します。
     
    2.債務の計上転記、取消転記
    FI-GLと同様にAPでの債務計上の画面でも、よく作成する仕訳については、仕訳パターンを「仕訳テンプレート」として登録しておくことが可能です。伝票入力項目については、導入するモジュールに応じて自動的に必須入力項目になるものや、設定によって必須項目に定義することが出来ます。入力必須/任意/非表示は、「項目ステータス」というカスタマイズによって制御します。また、仕入先マスタに設定した項目は伝票の初期値となります。例えば、仕入先マスタに設定した「支払条件」は伝票にセットされ、「支払条件」からは「支払予定日」が計算され、「支払期日」がセットされます。
    転記したFI伝票について、テキスト(摘要)項目など変更可能な項目もありますが、金額など、会計数値に関する情報の転記後の変更は出来ません。従って、金額を訂正したい場合には、反対仕訳を転記します。
    FI-APで転記した債務伝票はFI-APで反対仕訳を登録しますが、MMモジュールから発生した債務計上伝票を反対仕訳したい場合は、MM側で処理を行います。このようにしてSAPシステムでは、取引を入力したモジュール(機能)から取消処理を行うことでFIに反対仕訳を転記し、ビジネス取引と会計伝票の関連性・データの整合性を担保しています。
     
    3.特殊仕訳
    「仕入先に対して買掛金だけではなく支払手形も発生する」というように複数の債務が発生する場合、特殊仕訳機能が利用できます。
    伝票入力時に特殊仕訳コードを入力することで、仕入先マスタに設定した統制勘定ではなくカスタマイズで設定した勘定に転記が行われます。標準で手形の特殊仕訳コードW、前払金Aが用意されています。

     
    カスタマイズでは、伝票入力時にWを入力した場合には、仕入先マスタの統制勘定が買掛金である場合は「支払手形」勘定を使った仕訳にする、と設定します。(以下はカスタマイズ画面イメージ)

     
    支払手形と前払金については専用画面が標準で用意されています。
     
    同一の仕入先に買掛金も未払金も発生する、という要件がありますが、この場合には特殊仕訳ではなく代替統制勘定機能を利用することが一般的です。
     
    4.仕入先の明細レポート
    仕入先明細照会や仕入先明細ブラウザなどの標準レポートが用意されています。

     
    これらのアイコンを使い、明細レポートのレイアウトの定義/降順・昇順ソート/フィルタ/合計・小計、またエクセルダウンロード等を行うことが可能です。
    柔軟な明細レポートなので非常に活用しやすいです。
    仕入先明細ブラウザでは、マスタの名称(テキスト)が表示できるようになりました。
     
    5.支払プログラム
    銀行振込のため、銀行に送信する全銀手順に従ったフォーマットでの振込データ(FBデータ)を作成することが出来ます。従来の固定長ファイルはもちろん、2018年12月より稼働開始したXMLファイル形式にも標準で対応しています。
    支払プログラムの処理ステップは
    ①実行パラメータを登録
    ②実行パラメータで、支払方法・支払期日等を使い支払い対象となる該当データを抽出(提案プログラム実行)
    ③買掛金を消込(支払プログラム実行)
    ④支払媒体(FBデータ)の作成(印刷プログラム実行)
    となります。
     
    6.外貨建て債務の期末評価
    決算用の機能として、外貨建債権管理の評価プログラムが標準で用意されています。
    換算レートタイプを使い、外貨計上用のレートと評価用のレートを別に登録しておくことが出来ます。
     
    7.源泉税転記
    弁護士や税理士等の専門家に報酬を支払う際に、支払額から源泉税分を差し引き、預かり源泉税と処理して納付する業務に対応する機能です。(従業員の源泉税はFIの対象ではありません。)
    弁護士や税理士を仕入先マスタとして登録し、源泉徴収税コードを割り当てておきます。伝票入力の際に源泉金額等を入力する項目が表示されるようになるので、必要な情報を入力します。カスタマイズ設定の内容に従って、計上時または支払時に預かり源泉税の仕訳を転記します。
    支払調書や源泉徴収レポートが標準で提供されています。
    なお、源泉徴収税レポートは、SAP S/4HANA for Advanced Compliance Reporting (ACR)機能に置き換わることが予定されている、とのことなので動向の確認が必要です。
     
    ■おわりに
     
    今回はFIモジュールの概要として、FI-AP(債務管理)の主な機能をご紹介いたしました。次回は、FI-AR(売掛金管理)についてご紹介させていただきたいと思います。