「SAP MMモジュールのナレッジ共有」No.4 SAP MM 取引の際に必要となるマスタの解説
はじめに
SAP Freelance Jobs運営事務局です。
この度は「MMモジュールのナレッジ共有」と題し、数回に渡って、SAP ERPの「MM」の概要について解説していこうと思います。
今回は、MM関連のマスタの中で取引関連の情報を管理するマスタ「購買情報」、「供給元一覧」、「供給量割当」についてお話します。
1.SAP MM取引関連の情報を管理するマスタとは
SAP MM関連の主要なマスタとして以下の5つが存在します。
- 品目マスタ
- BPマスタ(仕入先マスタ)
- 購買情報マスタ
- 供給元一覧
- 供給量割当
この中で「購買情報マスタ」「供給元一覧」「供給量割当」については、「品目マスタ」「BPマスタ」の情報を元に、品目毎に取引先と取引するための情報を管理するためのマスタになります。
「供給元一覧」「供給量割当」はSAP PP(生産計画/生産管理モジュール)で実行するMRPと呼ばれる機能でも利用されます。MRPとは「資材所要計画」とも呼ばれますが、商品を作るときに「必要な部材」「必要となる納期」「必要となる数量」を算出する機能です。MRPの実行まではPPモジュールの領域となりますが、算出された結果を元に「どの仕入先と取引するか」という仕入先の情報を「供給元一覧」「供給量割当」で設定するため、SAP MM領域のマスタとなっております。
2.SAP MM取引関連の情報を管理するマスタの解説
SAP MMで利用する「購買情報マスタ」「供給元一覧」「供給量割当」について解説していきます。
2-1.購買情報マスタ
購買情報マスタとは、仕入先から仕入れる品目の情報を管理するマスタになります。同じ品目でも取引先によって取引の内容が異なるため、SAPでは購買情報マスタを設定して、しっかりと取引情報を管理しています。例えば、何度も取引する品目に対しては、仕入先と購買単価を協議して決定した単価で、一定期間取引するのが一般的です。協議して決定した発注単価を「協定単価」と言いますが、SAPでは購買情報マスタで協定単価を管理することができます。その他の情報として、どのくらいの期間で納入できるかという納入情報や、前回の発注情報(発注番号や購買価格)などが管理できます。
同じ「品目」、「仕入先」でも「購買組織」「プラント」毎に異なった取引をするケースがあるため、SAPでは「品目」「仕入先」「購買組織」「プラント」をキー項目として管理しており、購買情報の照会画面では、下記のようにカテゴライズされています。
・一般データ
一般データでは「品目」「仕入先」で決定する情報が管理されます。例えば、発注する数量の単位や仕入先側の企業情報です。仕入先の企業情報とは、仕入先で管理している品目コード(例えば発注する側は「品目A」と呼んでいるが仕入先が「品目B」と呼んでいる場合などに利用できます)や販売担当者の氏名、電話番号などです。
・購買組織データ
購買組織データでは「品目」「仕入先」「購買組織」で決定する情報が管理されます。例えば、仕入先からどのくらいの期間で納入されるかといった情報や、発注時にデフォルトで設定する発注数量、最低限の発注数量などが管理されます。
・条件
条件では「品目」「仕入先」「購買組織」「プラント」で決定する情報が管理されます。例えば、協定単価や協定単価の有効開始日/終了日、購入数量に応じた値引き後の金額(スケールと言います)などが管理できます。
次に購買情報マスタを構成するテーブルと、利用するためのトランザクションコードは次の通りとなります。
・テーブル
テーブルID | テーブル名 |
EINA | 購買情報(一般データ) |
EINE | 購買情報(購買組織データ) |
A017 | 品目購買情報(プラント別) |
A018 | 品目購買情報 |
・トランザクションコード
機能名 | トランザクションコード |
購買情報マスタ登録 | ME11 |
購買情報マスタ変更 | ME12 |
購買情報マスタ照会 | ME13 |
購買情報マスタの変更履歴 | ME14 |
購買情報マスタの削除フラグ | ME15 |
仕入先別購買情報照会 | ME1L |
品目別購買情報照会 | ME1M |
2-2.供給元一覧
供給元一覧は、「品目」「プラント」をキーとして調達可能な供給元(仕入先)を購買依頼や購買発注を作成する際に、参照するために必要なマスタになります。また、MRPを利用する際に供給元一覧を参照するような制御もできます。製造業などでMRPを利用して同一の部品を定期的に発注する企業は良く利用するマスタですが、そうでない企業は利用しないケースもあります。
主な設定項目は、以下の通りとなります。
・有効期間
供給元一覧に定義した内容が有効である期間を設定します。手動で購買依頼を作成する場合は納入日付が有効期間内か比較されます。MRPの場合は所要日付が比較されます。
・仕入先
対象の品目を仕入れる仕入先を設定します。
・固定仕入先
複数の仕入先が設定されている場合、固定仕入先にフラグを設定することで優先的に使用されます。
・供給プラント
別プラントから調達する品目の場合に設定します。
・ブロック供給元
ブロック供給元にフラグを設定することで、購買情報や購買依頼を作成する際に、仕入先を利用されないようになります。
・MRP区分
MRPに使用される仕入先か制御することができます。
次に供給元一覧を構成するテーブルと、利用するためのトランザクションコードは次の通りとなります。
・テーブル
テーブルID | テーブル名 |
EORD | 供給元一覧 |
・トランザクションコード
機能名 | トランザクションコード |
供給元一覧登録 | ME01 |
供給元一覧変更 | ME02 |
供給元一覧紹介 | ME03 |
供給元一覧の変更履歴照会 | ME04 |
2-3.供給量割当
供給量割当は、「品目」「プラント」をキーとして、複数の仕入先から調達するケースに、各仕入先からどのくらいの配分で調達するか設定するマスタになります。
供給量割当を使用するケースは、計画手配やMRP、購買依頼、購買発注などがありますが、カスタマイズおよび品目単位にどのケースで使用するか制御できるため柔軟な対応ができます。
次に供給元割当を構成するテーブルと、利用するためのトランザクションコードは次の通りとなります。
・テーブル
テーブルID | テーブル名 |
EQUK | 割当ファイル – ヘッダ |
EQUP | 割当ファイル – 明細 |
・トランザクションコード
機能名 | トランザクションコード |
供給量割当更新 | MEQ1 |
供給量割当照会 | MEQ3 |
供給量割当の変更履歴照会 | MEQ4 |
3.SAP MM取引関連の情報を管理するマスタのまとめ
本記事では、SAP MMの「購買情報マスタ」「供給元一覧」「供給量割当」について解説しました。
「購買情報マスタ」は、品目マスタとBPマスタに並び、SAP MMで利用するメジャーなマスタになります。「供給元一覧」「供給量割当」は業種によっては利用しない企業もありますが、製造業などの商品を作るような業種に関しては、特定の部材を定期的に購入するため利用する企業が多いです。製造業などでSAPコンサルタントとして活躍するためには「供給元一覧」「供給量割当」も必要な知識となりますので、しっかりと身に付けてプロジェクトに参画することをおススメします。