「SAP MMモジュールのナレッジ共有」No.6 SAPMMのトランザクション(入庫伝票、請求書照合)
1.はじめに
SAP Freelance Jobs運営事務局です。
この度は「MMモジュールのナレッジ共有」と題し、数回に渡って、SAP ERPの「MM」の概要について解説していこうと思います。
今回は、MMモジュールのプロセスで作成されるトランザクションデータ「入出庫伝票」、「請求書照合」についてお話します。
2.SAP MM入庫出伝票
2-1.入出庫伝票とは
「入出庫伝票」とは、品目を移動するときに登録する伝票になります。SAPMMでは主に発注した品目が取引先から納入されるときに作成される伝票になります。一般的には発注した品目と一緒に、品目名や数量が記載された納品書を付けて納入されるケースが多く、納品書の記載内容と現物の内容(数量や品目)が一致しているか確認し、一致していればSAPに入出庫伝票を登録する業務の流れとなります。
入出庫伝票を登録すると、SAPの「在庫」になりますが、入出庫伝票の項目「移動タイプ」でどこの在庫に入庫するか制御することが可能です。例えば、移動タイプ「101」(発注入庫)で入出庫伝票を登録した場合は、後続の製造作業で利用できる”利用可能在庫”になります。一方で何かしらの理由で”利用可能在庫”にする前に、処理を保留したい場合は移動タイプ“103”を登録して”入庫保留在庫”として登録することが可能です。
また、製造業など精密部品を扱う業種の場合は納入された品目が”正しく動作するか”、”不良品じゃないか”などを検査する「品質検査」というプロセスがあります。「品質検査」が必要な品目の場合、品目マスタの検査タイプを設定することで、移動タイプ「101」が登録されても”利用可能在庫”にならずに”品質検査中在庫”に移動するような制御も可能です。
2-2.入庫伝票の構成
入出庫伝票は、ヘッダと明細といった構成になっております。入出庫伝票のヘッダ情報は伝票が登録された日付や登録したユーザIDが登録されます。明細に関しては重要な情報は以下のような項目になります。
・品目
納入された品目を指定します。
・数量
納入された品目の数量を指定します。
・保管場所
保管したい保管場所を指定します。ただし品目マスタに登録されてない保管場所は指定できません。
・移動タイプ
納入された品目をどのような移動をしたいか移動タイプを指定します。
2-3.入出庫伝票に関連するテーブルとトランザクションコード
入出庫伝票を操作するためのトランザクションコードと、データが保持されるテーブルは以下の通りです。
(1)トランザクションコード
機能名 | トランザクションコード |
在庫移動(入出庫伝票登録) | MIGO |
在庫概要照会 | MMBE |
入出庫伝票一覧照会 | MB51 |
保管場所別在庫一覧照会 | MB52 |
(2)テーブル
テーブル名 | テーブルID |
入出庫伝票ヘッダ | MKPF |
入出庫伝票明細 | MSEG |
3.SAP MM請求書伝票
3-1.請求書伝票とは
「請求書伝票」とは、「請求書照合」と呼ばれる取引先から受領した請求書の内容が正しいか確認するプロセスで作成される伝票になります。請求書伝票では、品目、請求金額、消費税、請求日付などの項目を登録することができます。購買発注で発生した請求書に関しては購買発注伝票を参照して請求書伝票を生成することができ、購買発注伝票の品目や取引先、支払条件などが請求書伝票に引き継がれます。
生産に使う部品など、少量を多数納入するケースの実業務は、月に1度、請求書を受領するといった企業もあり、納入毎に請求書を作成しないケースもあります。そのようなケースの場合、仕入先マスタの「ERS」といった項目にフラグを設定ことで納入時に自動で請求書伝票を作成するといった設定にも出来ます。
3-2. 請求書伝票の構成
請求書伝票はヘッダと明細といった構成になっております。請求書伝票で抑えておきたい重要な情報は以下になります。
■ヘッダ情報
・金額
請求書の総金額を設定します。
・税額
請求書の税額を設定します。
・支払条件
支払条件を設定します。支払い条件とは請求が発生してから何か月後に支払うかといったコードをカスタマイズで事前に定義しておく必要があります。
■明細情報
・金額
請求されている品目の金額を指定します。
・数量
請求されている数量を指定します。
・品目
請求されている品目を指定します。
3-3.請求書伝票に関連するテーブルとトランザクションコード
請求書伝票を操作するためのトランザクションコードと、データが保持されるテーブルは以下の通りです。
(1)トランザクションコード
機能名 | トランザクションコード |
請求書入力 | MIRO |
請求書伝票照会 | MIR4 |
請求書一覧 | MIR5 |
請求書取消 | MR8M |
(2)テーブル
テーブルID | テーブル名 |
請求書照合ヘッダ | RBKP |
請求書照合明細 | RSEG |
4.SAP MM入出庫伝票、請求書伝票のまとめ
本記事では、SAP MMの「入出庫伝票」と請求書照合のプロセスで発生する「請求書伝票」について解説しました。
入出庫伝票は、企業の製品の在庫管理につながる伝票となりますので倉庫管理(WM)領域の橋渡しになる伝票となります。請求書照合はSAP MMの調達プロセスの最後のプロセスで、請求書伝票の作成と同時に作成される会計伝票が財務会計プロセス(FIのプロセス)の橋渡しとなる伝票になります。つまり請求書伝票が企業の決算に活用されるため、決算業務などで非常に重要な役割を果たすプロセスになります。しっかりと身に付けてSAPプロジェクトに参画することをおススメします。